2020/05/04 01:20

“コーヒーを淹れる”と言えば、お湯を注ぐとフワーーッと膨らんでいく様子を思い浮かべる人も多いかと思います。巷では、まことしやかに”新鮮なコーヒーは絶対に膨らむ”と囁かれていますが、本当にそうでしょうか?

お客さんからもよく、焙煎したてのコーヒーを使ってるのに、蒸らしの時に膨らまないのは何故か?という質問をいただくので、今回はその質問に答えていきたいと思います。
(今回は抽出テクニック的な話ではないです)

【そもそもコーヒーってなに?】
まずコーヒーは、コーヒーチェリーという果実の種です。

この果実を収穫して、精製、乾燥したものがコーヒーになります。

こちらは、焙煎する前のコーヒー豆(※1)です。採りたてのえんどう豆のような青い匂いがして、とても硬いのでそのままでは飲むことが出来ないため焙煎する事が必要です。
そして、この“焙煎”がコーヒーの膨らみについての鍵を握っています。
※1:焙煎する前のコーヒー豆のことを生豆と言う(なままめ、きまめと読みます)。

【焙煎を化学する】
言わずもがな、焙煎とは熱処理による化学変化のことです。この熱処理によって、豆の組織や構造も変化していきます。
では、具体的に、順を追ってみていきましょう。
①生豆から水分が蒸発して、コーヒー豆の細胞組織が収縮する。
②細胞内部の成分が溶けて、細胞の壁に付着する。
③溶けた成分の一部が気化するため、一度収縮した細胞は膨張する。
④収縮と膨張のため、もともとの細胞組織が破壊され、細胞の一つ一つの内側に空洞ができる。
以上が、焙煎がコーヒーに及ぼす変化であり、実は私達が飲んでいるのは、この空洞ができた細胞の中に閉じ込められた成分です。成分の一部が気化すると書きましたが、それには炭酸ガスも含まれており、お湯を注いだ時にコーヒーの粉が盛り上がってくるのはこのガスが原因です。

【新鮮なコーヒーは全て膨らむの?】
さて、コーヒーが膨らむ理由は焙煎時の化学変化によりコーヒーが炭酸ガスを含みそれがお湯を注いだ時の膨らみの秘密という事が分かって頂けたと思います。
しかし、実は焙煎したてでも膨らまないコーヒーがあります。それが浅煎りコーヒー(極浅煎りといった方が良いかもしれません)です。焙煎のメカニズムから説明させて頂いたのは、そもそもの焙煎方法違うからです。実はコーヒー豆の細胞にできる空洞の大きさは焙煎が進めば進むほど大きく、脆くなっていきます。つまり、浅煎りコーヒーの焙煎時間は短いため、もともとコーヒー豆自体が持っているガスの量も少なく、焙煎したてでもそんなに膨らむことがないと言えます。そして、炭酸ガスはお湯がコーヒーの粉に馴染むことを妨げてしまうため、抽出の邪魔をしてしまうことになります。なので、焙煎してから5日後くらいからがガスが落ち着き、飲み頃です。

今回はコーヒー業界でよく言われる”コーヒー膨らまない問題”について取り上げてみました。コーヒーが膨らむか膨らまないかは、ダイレクトに味に影響がないのでそんなにナーバスにならず、自分の好きな味になるように楽しく淹れてくださいね!

こんな感じオルトのページでは、コーヒーを科学的に捉えての発信もしていきたいなと思っています。

少しでも、皆さんのお家でのコーヒータイムが豊かになるお手伝いができたら、とても嬉しいです◎
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。